えいごたどく功徳 1.語彙と読書バランス

1.むすめが大学で多読授業スタート

 英語多読で執筆させていただいたのは、2010年。当時マルチリンガルは国内ではあまり紹介されておらず(SEL/セカンド・イングリッシュ・ラングエージ/が主体)、カナダに次いで言語教育がすすんでいた多文化多文化共生のハワイへ視察見学に行きました。なにより図書館が小学校を含む言語プログラムを担っているということに興味があったのです。

 ライブラリアンさんに図書館で教えを乞いたい旨のお手紙を出し、単身乗り込んだのでありました。あの時の経験や、一緒に 子どもたちにストーリーテリングさせていただいたこと、バスの中で 現地の皆さんとついうっかり合唱しちゃったこと…などなど、よい体験でした。で、はや13年…当時まだ幼かった娘は 成人し、さらには 大学で英語多読の授業を受けることに…


2.「たくさん」は人によって違う

 先生が「びっくりするほどたくさん本が読める」と言うので大喜びで多読授業を履修した娘。蓋を開けたら、電子書籍も所蔵本も、既に読了済みの本ばかり、それも全て揃っておらず、必ずテスト…ということで、私に八つ当たり。とばっちりです、わたしは。

 でもね…限られたコストの中で運営するならば、ビギナーズレベルを沢山用意して、あとは無駄なく…というラインナップになります。私でも、そうします。それでも英語の教科書を10数年かけて10冊読むんだよ、という国内の英語科授業に比べれば、ぜいたくで、豊かなことですよね…

 英語多読をこれから…という方やその功徳を期待している方のために「書棚ひとさお分の書籍が必要」とよく表現していますが、語学として駆使したいと思うならば…トラックいっぱいの本を読む…くらいに思っていた方がいいですよねぇ。

 娘は「とくにママから英語を教わってない、教えてくれなかった」と言われるのですが、 自宅に数万冊所蔵しているうえに、ハワイ州立図書館の本を好きに読めたんですからねぇ…それもラッキーなことで、超えるものがあるとするなら、海外の図書館へ行くしかないんじゃないでしょうか。一般的な「たくさん」に期待していたとするなら、甘い、甘い。「いっぱい」とか「たくさん」なんて、人によって違っちゃうんだから。


3.多読と読書は異なるけれど。

 娘の話を聞いていて、ひとつ整理をさせてもらいました。娘が「やりたい」と思っているのは「多読」ではなく、「読書」です。両者は相関関係にありますが、別モノです(と私は考えています)

多読は「すらすら読み」ができるようになるための訓練のひとつ。読書は、物語を楽しむ、表現を楽しむ…という、多読功徳の先にあるものです。

 日本では、あまり「読むための勉強」をいたしません。けれども「読むための読書(訓練)」を行うことで、失読症の方が改善された…という事例を実際に私自身が数人手掛けていますし、スキルアップや定着は 従来の比ではありません。

 日本語の文字構成は素晴らしいのですが、残念ながら「読むための本(読書教材)」は、世界から大きく後れをとっています。識字率が高いからですよね。読書が苦手、嫌い…というとらえ方で終わってしまって、その先の対処がない…じつに残念です。

 日本語においても「読書嫌い、読書が苦手」と感じる方であっても、訓練によって改善できる可能性は大いにあるのです。


4.多読効果リミットとなる4パターン

 ところがですよ?多読は「すらすら読み」のためのメソッドのひとつで、全部ではありません。この点、とくにプログラムづくり(教材ハウツーなど)について、ハワイ大学の准教授と意見交換をいたしました。


たとえば、英語多読の結果 ペーパーバックを読めるようになって「わあい!やった!ついに読めるようになったのだ」という経験を持ったとしても、次のペーパーバックがスラスラ…とは限らないのです。


原因を「語彙力」とする説が主流でしょうが「なんとかしたい」と思っている学習者にしてみれば「語彙をつける」という解決策は、なんとも漠然としています。「語彙力」という一言で終わらせてしまうのではなく、きちんと対策をたてられるように パターン化できるはずと考えて、この点についてハワイ大学の准教授とおはなしし、概ね私の考え方は正しいんだろうなと思いました。語彙を原因とするならば、少なくとも 4パターンに分けられます。


 1.リテラシー(文字と音との一致)教育の不足
 2.ものがたりの背景~文化的背景、環境的背景~
 3.翻訳によるセンス

   ※英訳本で、ロシア語、フランス語、中近東がオリジナルとなる場合

    かなり英訳のハードルが上がり、翻訳の仕方によっては読みにくくなります

 4.スラングや口語体、コロニーや地域特性、年代による言い回しの違い


次の項から、この4パターンについて書かせていただきます。ただし…「1リテラシー」に関しては専門分野になりますので、一番最後に取り扱います。

5階のうだがわです。

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