えいごたどく功徳 2.ものがたりの背景と辞書や辞典

1)宗教や祭祀など

娘が「到底読めない」と言って持ってきた本がいくつかあり、そのうち1冊は、ちょっとググって面白くて一気に読んだといいます。


 「よくもまあ、ママはこんな本を辞書もなしに読めたね。しかも邦訳もないよ」


 邦訳が難しいだろうなぁ・・・と思った1冊で、出版から15年余り邦訳されていません。だけど、ものすごい面白い本なんですね。


 ペーパーバックやドラマを見ていると、核ではないのですが 土台に宗教や民俗、民話が分からないと分からないだろうなぁ・・・ということが度々あります。とくにファンタジーやアドベンチャーは、分かっていると「あ、あれだ!」と思って100倍面白いのですけどね。


 娘が選んだ1冊は、天体を核とする宗教にまつわるハナシ。

天体にかかる用語はよいとしても、宗教がからむと儀式の用語、儀式そのものを知りませんから、ちょっとイメージがしづらくなるんですね。

 とくに天体は、古来から月や天体は暦(こよみ)と一対で、それは人間のバイオリズムに関わると考えられていたので、その儀式においては放送禁止用語な酒池肉林シーンがくりひろげられるのです。それは海外に限らず、国内でも現代では「ありえない」クラスのはなしで、古文書を前に ひっくりかえりそうになります。


 仏教美術で専攻し、文化財課にいた私は、中国から西域、ロシアまでを視察見学して、天体を中心とした宗教にはまり、骨とう品的に収集していた時期がありました。国内の仏像などもそうですが、星曼荼羅と呼ばれるもの、尊勝王法という呪術、それから、西洋に至っては、自然発生的な宗教、西域で壁画に描かれている一コマなどなど…論文を含めて随分集めたもんでした。だから、その1冊も手に取ったのですね。


 娘に「どんなワードでぐぐったの?」と聞いたら、宗教そのものをウィキペディアで検索し、それから理解できたと言ってました(日本語での記事がないそうです)


 「辞書をひくな」と言われる英語多読ですが、「辞書をひかなくてもよいレベルで『すらすら読みの訓練』をしなさい」ということであって「調べてはいけない」ということではありません。宗教や民俗などについてのリサーチは、本来の読書の目的だけでなく、異文化理解、多文化共生、なにより自分自身の人生が豊かになる大切なことがらです。すらすら読みの訓練では、辞書を用いない…とアプローチとし、お楽しみの読書では ご自身の興味や人生を広げる…そんなふうに使い分けをいたしましょう。


2)いきもの、ばんざい!

多言語で本を読んでいると「へえ!動物園にいる、あの〇〇が、そのへんをトコトコ歩いてるんだ」とワクワクすることがあります。

 ORTに出てくる「ハリネズミ」なども可愛らしいですし、アルマジロが高速でゴロゴロつぶされて、なんてハナシや スカンクを車でひいてしまったら、しばらく臭いがとれなかった、なんてエピソードもトリビアでした。


 日本の「奥歯にモノが挟まった」という表現を、「カエルがノドに詰まった」と書いてある本や「アメリカオオトカゲが喉にいるような」と表現している本もあります。へえ!って、アメリカオオトカゲを図鑑で調べたくなりますよね。


世界各国、みちかな生きものの「比喩表現」は枚挙にいとまありません。ここの珍しいが、あちらの「普通」であること、その上身近な動物ですから、よくよく動物の特性をつかんでいて、ひとり悦に入って喜んでしまいます。文法的に言えば「形容詞」や「副詞」にあたっていることもあり、文章の意味がとれない時もあるのかもしれませんね。


 たとえば「七面鳥」は警戒心の強い鳥ですが、そこから「慎重な、人見知りする」といった時に使っていることもあります。ハワイに生息し、カミサマ的存在の「ネネ(鳥)」は、「ずるい」という比喩の時と「幸せやセカンドステージを待つ」という時に使います。ネネという鳥が水陸両用ちゃんでありながら、空を飛べない(から希少価値に)という性質をあらわしたものです。


 多読の仕上げは「すらすら読み」だけでなく、読書によって、自らの人生が輝いていくことです。だから、こうした事柄は、どんどん調べてほしいのです。図鑑や辞典、辞書で調べることにより、「七面鳥を七面鳥たらしめる用語」がさらに自分の中に培われます。それこそが、読書のだいご味ではないでしょうか。


 ※TADOKUコレクターであるなら、その辞書の文字をカウントして語彙を貯蓄してみてください。これもね、無意味ではありません。数えるとなると、指で文字を追うでしょう?その行為自体が、すでに「リテラシー学習」として、言語の血肉となっています。


3)民俗、歴史にかかることがら

唐突ですが「えぼし」をイラストで描いて、その横に漢字で表記してください…と言われて、できるでしょうか?では、かとうまど、はどうでしょう?(花灯窓、華頭窓、架灯窓)


日本の古典世界の中の衣装や建築、風習などは、ニホンジンでありながら、見知っているものではありません。読書しながら「うーん、たぶん貴族っぽい人が頭につけてる、あの黒い帽子かなぁ?」なんて、大河ドラマを思い出して、アタリをつけながら読んだり、はたまた調べたりすることでしょう。


海外の本でも同じです。中世の衣装、甲冑、武器…といった道具類とそれをとりまく用語、海賊や農業など、現代とは異なる「職業」をとりまく用語は、ネイティブであったとしても学ばなければ知りえない言葉です。


タドキストさんであった頃、わたしはそれらを「ナイト(Knight)もの」「パイレーツもの」「カウボーイもの」などと呼んでいました。最適最短なのは、子供向けのイラスト入りの辞書。1ページにババーンと世界観が描かれて、ひとつずつに単語が書いてあります。


4)偉人、人名、地名


それから「偉人」なども、全く分からない場合があります。現在の日本では、大分広がりましたが、イギリスのガイ・ホークス、アメリカのジョニー・アップルシード…伝説ともなっている人々は、日常会話やドラマにも多く出没します。リンカーンなどは、イキガミ様みたいなところがあり「Abe」と表記することが少なくありません。


 わたしは、米国のサカジャウィーワが大好き(ナイトミュージアムでネイティブアメリカンのみつあみ女性)。若者世代の「一気」のバツゲームにサカジャウィーワって項目があるのですが、彼女がクラーク探検隊で翻訳者として活躍しながら、旅路で出産をしたために、「一気バツゲーム・サカジャウィーワ」では、タオルを頭にかぶって、みつあみみたいにしたら、友人をおぶって、階段(ロッキー山脈)を昇り降りする…ってアクションです。お酒がまわって、そりゃもう、ヘロヘロですよ。

 脱線しますが、サカジャウィーワは まじでハマリました。ショーボンニューという、探検隊翻訳者のカナダ人の二番目の妻、ってあって え?カナダって重婚あり?いやいや、どうやら当時のネイティブアメリカンは法的に、妻ではなく資産の附帯物とされていたらしい、けしからん!とか、ショーボンニュー(だんな)は水が苦手で川下りのボートに乗れずに、サカジャウィーワに平手打ちされてみたり、だんながバイオリン弾いて彼女は産褥もそこそこ、踊りまくったり。だんなさんのショーボンニューは極上のコックさんでもあって、探検隊のまかないレシピブックまで出版されています(これも持ってます)。

皆さんが大好きな「ハニーマスタードソース」を世界で初めて作った人なんですよ。


生の英語、生きた英語…とニホンゴ英語教育でよくうたっています。でもね、温故知新であってほしいな、長い歴史の中から、楽しみやきらめきを見つけてほしいな…と思っていて、それは日本人だけでなく、世界中の方々に向けて願っていることです。





5階のうだがわです。

茅ヶ崎駅前で今日もホンキで、防災、英語絵本、地域活動しています。